博士号取得者が民間企業へ就職した理由2つとアカデミックに残らなかった理由5つ

就職

こんにちは。pomusanです。

プロフィールにあるように私は博士号を取得しました。

博士号取得者の進路としては、大学や国立の研究所(国研)をイメージする方が多いと思います。と言うよりも、将来大学や国研で研究することを考えているから、博士課程に進学するかも知れませんね。私も実際そうでした。

しかし、就職活動や研究活動の中でいろいろと考えが変わっていきました。

そこで今回の投稿では、私が民間企業に就職を決めた理由について投稿します。

博士課程に所属して進路に悩まれている方、もしくは博士課程に興味はあるけど、その後の進路について不安を抱いている方に向けて、私の経験に基づいた考えを発信します。

以下に示す、私が民間企業に就職した理由およびアカデミックの場に残らなかった理由について見ていきます。

  • 博士課程に進学した時点でのビジョン
  • アカデミックの場に残らなった理由5つ
  • 博士課程で研究している過程で考えたこと4つ
  • 民間企業に就職した理由2つ
  • 自分に合った選択を考える

ではまず結論についてです。

■結論

アカデミックの場に残らないと決めた理由

  • 大学でやる気のない学生の相手をしたくない
  • 大学で授業を持ちたくない
  • そもそも覚悟が足りなかった
  • 論文が主な評価対象であることに疑問を感じた

民間企業に就職を決めた理由

  • 基本的に無期雇用
  • 実用段階に近い研究が可能

研究活動および就職活動を通して、研究と社会貢献の両立が可能であると考え最終的に民間企業への就職を決断。民間企業への就職に迷いが無くなる。

最も重要なことは自分に合った選択肢を考え続け、行動すること。行動し続ければ満足のいく選択ができるはず。

博士課程に進学した時点でのビジョン

博士課程に進学した時点では、卒業後の進路のことはよく考えていませんでしたが、研究に携わって生きていきたいとは考えていました。

また、大学には残らないと決めていました(笑)。

理由については次の項で触れますが、指導教員を見ていて少しネガティブなことを考えました。

また卒業できるかどうかということに対しては、不安は特に感じていませんでした。D1の10月時点でファーストオーサーの論文が2本あったので、かなり順調な方でした。

将来のことを考える余裕も十分あったのですが、何より研究が楽しいということ、今のうちに勉強して力をつけなければいけない、という思いが先行していたので、ただ一生懸命取り組んでいました。

よって私の場合は、将来のビジョンに関して明確な考えは持っていませんでした。

ただ、博士課程進学当初から今でも大切にしていることがあります。それは「好きな研究をやって、社会貢献すること」です。

上述したように研究が好きなので、研究に携わっていきたいという思いはずっとあります。さらに好きなことをやって、それで社会貢献できれば尚良し、と考えていました。

明確なビジョンを持っている方は、それに向かって邁進できるので非常に良いと思います。一方で、私のように特に将来に関する考えを持っていなくても、そんなに問題は無いかなと思っています。

アカデミックの場に残らなかった理由5つ

大学に残るかどうかを考えるときは、やはり指導教員を参考にするといいでしょう。私が指導教員を見ていて思ったことは以下の5つで、

  • 授業の準備大変そう
  • やる気のない学生の相手大変そう
  • 自分の研究テーマを持つのが難しい
  • そもそも覚悟が足りなかった
  • 論文至上主義に疑問を感じた

ということでした。

授業の準備が大変そう

授業の準備はほんとに大変そうで、90分の授業を準備するのに、その倍以上の時間をかけるようようです。最初の1年間で準備ができてしまえば、その後は何年も使いまわすことが可能でしょうが、テストやレポートを設ける場合は採点も必要です。日々の業務に加えてやっていくのは大変ですよね。

やる気のない学生の相手が大変そう

研究室の後輩を指導していても思ったのですが、やる気のない学生の相手をするのは本当にストレスが溜まります。後輩や同級生がやる気のない場合は関わらなければ済むのですが、指導教員はなかなかそうはいきません。自分の研究室の学生の場合、卒業させなくてはならないので、嫌でも関わらなければなりません。

指導してもそれをないがしろにするような学生とは関わりたくないですよね。基本的に大学生も大学院生も熱心な子は少ないので、そんな人たちに時間を割かなければならないのは最悪です。

自分の研究テーマを持つのが難しい

また指導教員を見ていると、研究テーマの立案ができるのはさすがだなと思います。知識の幅が広いですし、やっぱりアイディアがたくさん出てくるんですよね。

こんなこと自分にできるのかなと思いました。これは研究を続けている限り考えなくてはならないことです。これが非常に難しいですね。

そもそも覚悟が足りなかった

さらに言うと、有期雇用の期間が長いことも気がかりでした。就活の時に特に考えたのですが、やはり不安要素になり、覚悟できなかったというのが本音です。

国研に受かったとしても最初の5年くらいは有期契約で働くことがほとんどです。成果が出なかった場合無期雇用に移行することは難しいと思うので、不安を感じずにはいられませんでしたね。

ついでに自分のことを、堅実派なんだなぁと思いました(笑)。

論文至上主義に疑問を感じた

大学で研究している場合は、アウトプットの仕方は主に学会発表か論文発表です。特に論文発表数が多いほど、優れた研究者である可能性は高いです。ですので、特に若いうちは自分の能力をアピールするためにもファーストオーサーで論文を何報書いたかが重視されます。

私個人的にはこの傾向に少し疑問を感じました。論文になればそれでいいのか?ということです。

私自身論文書くのが好きだし、今後も機会があれば自分の研究を論文として世に出したいと考えています。しかしそれだけが評価手法になっていいものかと疑問を抱いています。

現実に論文を執筆する理由の大部分は業績を増やしたいということです。しかしそのようなモチベーションが先行しては、研究を通して社会貢献することは難しいと思います。

実際に研究にはなっても、その先がなさそうな研究もたくさんあります。業績になればそれでよかった、という可能性もありますよね。

上述した理由に加えて、論文執筆数が重視されるということから、アカデミックの世界に残ることはあまり考えなくなりました。

また最近の話ですが、論文の査読を手伝える機会がありました。投稿された論文を読みましたが、正直「これが論文になってしまうのか」という感想を抱きました。検討内容や手法がしょぼいというわけではなかったのですが、「量産型」なんですよね。その人がやる必要はなくて、誰でもできてしまいそうな内容でした。

個人的にそのようなものは研究ではなくて開発だと考えます。したがって企業に任せておけばいいんですよね。本質的な研究ではないと思いました。

とにもかくにも、このように「これって本当に研究?」と言いたくなるようなものが論文になってしまうこともあります。そうした論文を、学術機関である大学で量産して、果たして研究者としての役目を果たせるのでしょうか。そしてそのような論文を量産し続け、数を増やすことで評価された場合、「より良いもの」が世に出てくることは少なくなってしまうのではないかと考えます。

このように私は博士課程に在籍するうちに、研究には携わりたいが、必ずしもアカデミックの場である必要はないなと感じるようになりました。

これらが上述したように、「大学には残りたくないな」と考えた理由です。

私は大学に残ることに関して少しネガティブにとらえたのですが、逆に指導教員を見てポジティブに考える人も居るかもしれませんね。もしそのような方がいたら、ご意見聞かせていただければと思います。

博士課程で研究している過程で考えたこと4つ

博士課程で研究していて考えたことは、以下の4つです。

  • 研究が楽しい
  • 今後も研究に従事していきたい
  • 今のうちに勉強して力をつけたい
  • 将来のこと

上述したように、研究が楽しかったのでひたすら研究に向き合っていました。嫌になることはなかったですし、疲れたからサボりたいなと思うことも少なかったと思います。

そんな感じで研究を続けていたので、今後も研究に携わりたいという思いが生じてくるのは自然かなと思います。

ただ、いかんせん学生でいる期間が異常に長いので、スキルを身につけないと修了後が大変です。社会に出るのが遅いうえにスキルも無い場合、修了後苦労するのは目に見えているでしょう。なのでその部分で少しプレッシャーがありました。

さらに私の場合は学生を続けることで両親に経済的な負担を強いていたので、それを無駄にすることはあり得ないと考えていました。「研究スキルを高めなくてはならない」ということは常々考えていました(今は少しサボり気味です…)。したがって学生であるという状況は、私にとってモチベーションの1つになっていました。

将来のことに関しては上述したようにあまり具体的に考えていませんでした。ただ就職活動中に、研究をするうえで自分はどうやって研究をアウトプットしていきたいのかを考え始めました。

前項でも書きましたが、論文でのアウトプットがあまりに重視されるのは疑問です。やっぱり研究に携わるのであれば、社会貢献に繋がりそうな研究をしたいです。

民間企業に就職した理由2つ

さて、ここまではどちらかというとアカデミックの場に残らない理由について見てきましたが、ここでは民間企業を選んだ理由を見ていきます。

消去法で民間企業を選んだと言われればそうなんですが、ちゃんと理由もあります。

大きく分けると理由は以下の2つです。

  • 基本的に無期雇用
  • 実用段階に近い研究が可能

前項でも申し上げたように、大学にしろ国研にしろアカデミアの場に残ろうと考えた時、ほぼ確実に有期雇用です。国研は最初の5年くらいは有期雇用で、審査に通ればその後に無期雇用となります。

ただ、そもそも公募に受かるのが相当難しいんですよね。実際私は国権の公募に落ちました。だから民間企業へ就職せざるを得なかったというのも理由の一つです。

それでも私の場合、有期雇用であまり安定しないことをネガティブに捉えたので、そのようなプレッシャーが無い状態で研究したいと考えました。

また上述したように、個人的には研究して社会貢献したいという思いがあるので、それができる確率が高そうなのが企業での研究と考えるようになりました。

確かに企業は利益を追求する集団です。しかし利益が出る=需要があるということなので、社会的に需要のある研究が可能ではないかと考えました。もちろん大学での研究も価値がありますが、論文の量産はしたくないわけです。

また、場合によっては企業でも論文は書けるので、それも企業への就職を決めた理由です。

学術的な研究と、社会への貢献の両立ができるのではないかと考えました。

自分に合った選択を考える

ここまででアカデミックの場に残らない理由と、民間企業への就職を決めた理由についてお話してきました。

研究活動や就職活動の過程でいろいろなことを考えて進路を決めたつもりです。

しかし将来どうなるかはわかりません。今回私がした選択よりも、良い選択肢があったかもしれません。

正直私は大学でやるような基礎研究が好きで、応用研究はあまり興味がありません。学術的な議論をするのが好きです。

しかし企業はどちらかというと開発、つまり応用研究がメインだと思われます。したがって企業での研究開発が自分に合うかどうかは少し疑問です。

なので「こんなの研究じゃない」と感じて、また大学に戻ることを考えたり、国研を受けなおしたりすることもあるかもしれません。

さらに私は自動車会社に就職しましたが、自動車がとても好きというわけでもありません。よって内定をもらっていた他の企業に就職した方が楽しめる可能性もあります。

こうして見ると、自分の選択ってあまり的を得ていないのかもしれないですね。

ただ自分の選択がよかったかどうかは後にならないと分からないので、不適切だったかどうかも分からないんです。

「そんなこと言ったら元も子もない」と思われるかもしれませんが、実際そうじゃないですか?その時の選択が良かったかどうかは後にならないと分からないことは仕方がないです。

重要なのは、自分に合った選択はなんなのか常に考えることだと思っています。自分には何が合うのかを常に考えていれば、自分主導で物事を決定できるようになります。自分が望んである選択をすれば、満足度も高まると思います。それに仮に選択を誤ったと考えるのであれば、次に新たな選択肢を模索することもできます。

何も考えていない場合、人の言いなりになってしまい、大切なものを見失ってしまうかもしれません。

さらには今の自分の状況に不満を抱いているにも関わらず、行動することができません。自分に何が合うか分からないからです。何をしていいのか分からないと、不満を口にするだけで時間は過ぎてしまいます。もったいないですね。

したがって、皆さんにも常に自分に合った選択は何であるか考え続けることをお勧めします。

その一方で、自分に合った選択をするには、それができるようにスキルを貯めておく必要があります。能力が見合ってないのにやりたいことを求めるのは、無謀です。来るチャンスを掴むためにスキルを磨いておきましょう。

自分に合った選択肢をしていくためにも、頑張っていきましょう!!

(民間企業に就職して一年が経ったので、今の考えを今後投稿しようと思います。)

■まとめ

今回は、私が博士号を取得しながら、民間企業に就職を決めた理由についてお話しました。主に以下の項目について見ていきました。

  • 博士課程に進学した時点でのビジョン
  • アカデミックの場に残らなった理由5つ
  • 博士課程で研究している過程で考えたこと4つ
  • 民間企業に就職した理由2つ
  • 自分に合った選択を考える

博士課程進学から就職活動開始直前までは特に将来のビジョンは持たずに研究に没頭していました。ただ、好きな研究をして生きていきたいなと考えていました。

就職活動を始めた当初は国研に進みたいと考えていました。しかし就職活動を続けていく中で考えが変わっていき、アカデミックの場からは離れて企業で研究活動をしたいなと思うようになりました。

しかし企業で私が望むような研究ができるかは分かりませんし、いろいろ考えた挙句、下した選択を後悔するかもしれません。

でも未来のことは誰にも分からないので、そういうことが起きても不思議ではありません。

やはり大事なのは自分に合った選択は何なのかを考え続け、行動することだと思います。そうしたことを続けていけば、いつかは満足のいく選択ができるのではないかと考えます。

今回の投稿が、皆さんの選択に良い影響を与えてくれることを祈ります。今後は実際に企業で働いてみて感じたことも投稿していこうと思っています。

最後までご覧いただきありがとうございました!

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